星新一の“予知能力”

先日、とある用で大宮の“老舗”書店へ。

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この店は自分が最初にフルートを習っていた音楽教室の近所にあり、レッスンが終わったらよく立ち寄っていたものだ。

ここでよく買っていたのが、星新一氏の文庫本。「ボッコちゃん」「宇宙のあいさつ」「午後の恐竜」「マイ国家」「エヌ氏の遊園地」etc…..彼のショートショートが大好きだった。

この日も(懐かしいな)と思いつつ文庫本の列を眺めていたら…何と彼の新刊を見つけた。

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既に約17年前に他界している星氏だが、彼のちょっとした書き下ろしを一生懸命集めて1冊の本に仕立ててある…それがこの「つぎはぎプラネット」。早速購入。しかし昔に比べて、文庫本も随分高価になったものだ。

その内容はどの話もオチが弱い故、正直言って今の自分にはそんなにはウケない。だが、別の楽しみ方ができる!というのは…

ここに納められているのは大体1960年前後に書かれた作品だが、その中に未来の生活が描かれている話がある。その「未来」というのが、既に今からすれば「過去」の時代だったりするのだ。

そこで、星氏の描いた「未来」と今の現実社会とを比べてみる….これがなかなか面白い。

 

例を挙げてみよう。

1961年「四年の学習」正月特大号に掲載された「未来都市」という物語。ここでは西暦2000年の様子が描かれている。もう今から14年も前ではないか。早速その14年前の世の中と照らし合わせてみる。

文章をそのまま載せる訳にはいかないので、あらすじのみ。


 

主人公、明子の父は第5次火星調査隊の隊員として火星に行き、帰還する途中。

←×(=まだそこまでは…)。流石に火星にはまだ人間は降り立っていないが、探査機は降りている。ただ、宇宙に人が滞在する点に於いては、既に宇宙ステーションが実現している。

 

その父と明子が電話で交信。人工衛星の中継により、電波を強くしているからよく聞こえる。

←◯(=まさにその通り)。TVにせよ携帯にせよ、人工衛星のお蔭でブラジルの人にも良く聞こえている(笑)。

 

明子の母の体調が優れないので、自宅にある診察器を身体に当て、電話機に繋いで病院に行かずに医師の診断を受ける。

←△(=部分的に当たっている)。インターネットによる診察はあるが、全ての家庭に於いて気軽に、という訳にはいかない。流石に「インターネット」という言葉は、この本にはまだ出て来なかったが、電話線に繋ぐという概念が既にここに出てきているのは畏れ入る。

 

しかし結局病名が判らず、病院で検査を受ける事に。その迎えの車は空気の噴射で浮遊しながら走るので、振動がない。

←×。未来のクルマについてのコンセプトは、今や乗り心地よりもエコと安全性。浮かせる事については、リニアは別として考慮されていないだろう。

 

明子は独りで食事をしなければならず、自動調理器にミルクを入れ、「暖かい」ボタンを押してホットミルクを飲む。またパンを入れて「焼く」ボタンを押し、トーストを食べる。

←◯。ここで描かれているのはただの電子レンジではなく、オーブンレンジ(またはトースターレンジ)のような物か?自分さえ生まれていない時代にこのような機器を予想していたとは。星さん素晴らしい。

 

その他諸々の事情により学校に登校できない明子は、先生に連絡して自宅のテレビで授業を受ける。

←△。こういう学習塾もあるだろう。だが2000年時点ではまだだったと思うし、タブレット端末も発売されていなかった。

 

友達の正夫君がやって来て、TVゲームで遊ぶ。ピストルをコードでテレビに繋いで、画面に出てくる敵を撃ち落とす。

←◎(=むしろ現代の方が進んでいる)。ただ、任天堂からWiiが出たのはその6年後。ワイヤレスの時代まで想像していたら完璧だったのだが。

 

明子はおもちゃ箱から踊り人形を出す。この人形は歌を歌ってやるとそれに合わせて踊る。

←◎。1988年に出た「フラワーロック」を思い出す。

 

検査の結果、母の病気は「風邪」だった。ここ20年間殆どかかった人がなかったので、返って判明するまでに時間がかかった。

←×。風邪が昔の病気に定義されるとは、逆に怖い世の中である。


 

「未来都市」では以上のような話の他に、「自動洗顔器」「動く歩道」「ヘリコプタードライヴ」等も登場する。

それらが今の社会に実際に有る・無いはともかく、つくづく星新一氏の想像力、いや予知能力はノストラダムスを凌ぐなァと思う1冊であった。


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