楽章は切れてるけど

2013年度のモーニングコンサートが無事全部終了した。
その最後のプログラムはメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。

前半メンデルスゾーンは楽章間の切れ目がない。第1楽章と第2楽章の間はファゴットが繋ぎのH音を伸ばしているし、2楽章の最後の音が切れたら、すぐにソロヴァイオリンによる3楽章への導入部が始まる。

それに対してラフマニノフは普通に3楽章が分かれていて、普通に楽章間に小休止が入る(2と3の間はアタッカ)。が、自分にはメンデルスゾーン以上に楽章間の繋がりに工夫が凝らされている曲だなと思う。

その要因は何と言ってもその調性にある。

この曲の第1楽章と第3楽章はc-moll、その中に挟まれている第2楽章はE-Durである。普通、ロマン派位までの緩徐楽章は元の調とそんなに遠くないのに、この曲については何故?と思う程遠い関係だ。

第1楽章の最後がc-mollでしっかり終わった後、次の第2楽章はまだこのc-mollの和音から始まる。そして僅か4小節間のうちにラフマニノフはこの♭3つから♯4つへのワープ・マジックを見事にやり遂げてしまうのである。
ではどうやって行くのか?キーポイントは譜面ズラが♯系に変わる3小節目。

20140220a

(楽譜の上は実際に聞こえる調性。下は譜面上の調性)
わざわざBassの1〜2拍目を異名同音に書き換えているのだが、しかし聴き手にはまだAs-Durっぽく聞こえる。しかしAs-Durのトニックは実はcis-mollのドミナントと異名同和音。そこから同じ♯4つでもcis-mollを迂回してソロ・ピアノの5小節目からのE-Durのアルペッジョをスッと誘導する手法は実に鮮やかである。
そして第2楽章がピアノのE-Durのアルペッジョによって美しく終了後、次なる第3楽章の出だしもまた、E-Dur なのである。今度は多少手が込んでいて、弦楽器によるおどけたPPからオケのTuttiまでに16小節もかける。
20140220b
最初のフレーズから6小節後に同じ形をC-Durに移調して繰り返す。C-Durといえば、そのまま短調にするともうc-mollだというのが素人の考えだが、流石ラフマニノフは安易にそんな事はしない。
同じパターンでAs-Dur、そして平行調のf-moll(♭4つ)を介してc-mollに突入。尚ご覧の通りc-mollはc-mollでも機能はドミナント。この後ピアノが入ってもまだドミナントがずーーーっと続く。ようやくトニックになるのは第1主題が現れる43小節目から。かなり長いトンネルである。

という訳で、この曲を聴く度にこの絶妙な転調にほれぼれしてしまうが、流石に1楽章の後2楽章にアタッカで突入する演奏は皆無。あったら面白いだろうなあ。

今日のピアニストも上手だった。ただ、悦に入って身体をくねらせながら弾くのは見るに耐えないので、自分は殆ど見ないようにしていたが。


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