あがり症対策

2月に入った。そろそろ、各音大も実技の入試が始まる。

自分の大学入試はもう30年以上も昔の事だが、試験官達の前で独りぽつんと立って課題曲を吹くあの緊張感は今でも忘れない。

人は何でアガるのだろうか?動物はあがらないのか?とにかく厄介な生理現象である。

では今はどうかというと、オケでもソロでも若い頃程はアガらなくなった。やっぱり“本番慣れ”してきたという事か?但しこれはフルートを吹く時の場合のみ。

それ以外の事を人前でやろうとすると、まだダメだ。例えば昨年秋、ピアノ伴奏をする本番があった。その時は指先が他人のそれの様に感じる程アガった。また、曲間にマイクで喋ったりするのも、どうも思考が落ち着かない。いちいち「えー」が挟まったり、たまに頭の中が真っ白になって台詞が飛んじゃう事もしばしば。ピアニストにしても、プロの司会者にしてもつくづく尊敬する。

ではどうすれば上がらないようになるか?これまでの自分の経験から対策を検証してみると……….

心臓がバクバクと鼓動するのはアドレナリンという体内のホルモンが働きかけるからである。これによって顔が火照り、指や唇が震える。だがこのホルモンは割とすぐ使い切ってしまい、再生に時間がかかるそうである。そこでこれを逆に利用するのだ。

家内の従兄弟の娘という遠い親戚の子が、ヘアメイクの実技試験を受けた時の事。何かの不可抗力で試験会場に遅れそうになり、ギリギリ駆け込みセーフだったそうだが、その時は自分でも驚く程落ち着いてできたそうである。

この時それこそ全速力で走る事により、彼女はアドレナリンを事前に使い切ってしまったのだ。だから平常心でベストを尽くし、合格できたのだと思う。尤も、終わった時の疲労感はハンパなかったと察するが。

従って、本番前に全速で走れとは言わなくても、本番前のあのドキドキという緊張感はやはりあった方がいいのだ。自分にも何度か経験はある。「ヤバい、どうしよう…」という状況で袖に控え、そしていざ舞台に出た時、または吹き始めてちょっと経った時「フッ」と落ち着いてきたものだ。

逆に一番やっちゃいけないのが、本番前に喋ったりはしゃいだりして、リラックスしちゃう事!

音大の入試控え室では、同じ志の人達が集まっているからか、はたまた出身地が遠くて珍しいからか、何より心のより処が欲しいからか、受験生同士が仲良くなってくる。下手すると、もうすぐ自分の順番である事すら忘れて盛り上がってしまう。そしていざ試験会場に入ると一気に自分の立場を思い出し、一体何を吹いたのか憶えていない位アガってしまい、ショックに打ち拉がれて会場を去り、後に自分の番号の無い掲示板を見に行く破目になる。

だから本当は、控え室では独り“浮いている”方が良いのだ。「あの人暗いわね」なんて思われてもいいから、ベストを尽くす為には大いに前以てアガっておくべきである。


カテゴリー: その他研究・考察 タグ: , , パーマリンク