スピード違反

その日は仕事が早く終わったので、ちょっとお台場に寄って遊んでから帰ることにした。

レインボーブリッジを渡り終えてそのまま真直ぐ観覧車方面に走る。立体交差のトンネルの中心部で、オッサンが1人座って何やら調査していた。危ないなあ、何もこんな所で交通量の調査なんかしなくてもいいのに、と思いながらトンネルを出た所で、お巡りさんが数人立って待っていた。左に寄るよう誘導される。

何事か?事故でもあったのかと思っていると、1人が話しかけてきた。「水上警察署交通課の○○です。スピード違反の取締りをしております」とここまで聞いた時点で、鈍感な僕はようやく気付いた。自分はスピードの出し過ぎで捕まったのだ。「おたくのバイクは50キロ制限のところ、XキロオーバーのYキロで走っていましたので」あとはもう何を言われたのか、ショックであまり憶えていない。

 ワゴン車内に誘導されると、若い婦人警官が待っていた。早速疑問をぶつける。「何処で測っていたんですか?」「今出て来たトンネルの中です。お巡りさんが座ってませんでしたか?」(あーっ!あのシケたオッサン、ネズミ捕り係だったのか!なんで気付かなかったんだろ?オレのバカバカバカバカ・・・)「貴方はゴールド(免許)ですから、向う3ヶ月無事故無違反でいれば、今日の減点分は元に戻ります」と言われたが、何だかそんな自信は全然ない。

反則切符に記入される際、職業欄があり、訊かれるままに半ば放心状態で「音楽家です」と答える。するとその婦警さん、急に声が変わった。「楽器は何ですか?」へ?そんなことも聞くの?と思いながら「フルートです」「プロの方なんですか?オーケストラとか」「・・・はい」
へぇー、スゴイですネ。私も実はフルートやってたんですよ。でも風の音しかしなかったんで、警察のバンドには入れなかったんです。ヤマハの一番安いヤツなんですけどォ、やっぱりプロの方は何十万円もする楽器を持ってるんですか?」「・・・はい、仕事帰りなんで今ここに持ってます」「凄いですねーホントに凄いですねー」何が凄いのか解らないが、とにかく僕はここでスピード違反の切符を切られている状況である。それなのにそんなに持ち上げられたすると、立場が逆転しそうで更に頭の中は混乱した。

「ここ(お台場)はよく来るんですか?」「いえ、バイクで走るのは今日が初めてです」「そうなんですか。ここよく(取締り)やってるんですヨ」と、つい口を滑らしたりしている。だが最後に実に鮮やかなる指紋を採られ、反則金の話になった時、改めて自分の立場を認識することができた。

 ワゴン車を出た途端、その婦警さんは早速周りのお巡りさん達に自分の職業を言いふらした。そして出発の時は丁寧に誘導してくれて、皆軽く一礼までしていた。まるで感謝されているかのように。そーか、それだったらあの時、その場で何曲か吹いて、せめて反則金だけでもチャラにしてもらえば良かったかナ、なんて他愛のないアイディアを思いついたのは、それから暫く走ってからであった。

丁度十数年前の同じ日に、僕は原付で事故って入院もしている。つくづく事故とか怪我とかでなくて良かったと思う。だから今回の違反劇は、気を引き締めて運転するにいい教訓であった。「良薬口に苦し」か・・・。


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